日本語には、ほとんど意味は同じだけれども微妙にニュアンスの異なる言葉がたくさんあります。
その例の一つが「以後」と「以降」です。
両者には、どのような違いがあるのでしょうか。
意外にややこしい「以後」と「以降」の意味の違いと使い方に迫ってみましょう。
以後の意味・使い方
「以後」とは、「ある時点より後のこと」です。
「今、この瞬間より後」というニュアンスがあるため、「今後」という意味でも使われます。
もっとも、「以後」を使う場合は「ある時点」=基準時が明確でなくても構いません。
どちらかというと、その後に起こる物事や行動に重点が置かれているため、基準時はそれほど重要ではないのです。
- 以後、そのような口のきき方はしないように。
- それ以後、彼からは何の連絡もない。
以降の意味・使い方
「以降」とは、「ある時点より後のこと」です。
つまり、意味としては「以後」とまったく同じということになります。
ただし、「以後」とは異なり「今、この瞬間より後」というニュアンスはないため、「今後」という意味で使われることはありません。
一方、「以降」では基準時がとても重要です。
逆に、その後に起こる物事や行動はそれほど重要ではありません。
そのため、基準時が明確な場合によく使われます。
- 午後9時以降は消灯してください。
- 明治時代以降、日常的に和装をする人は少なくなった。
以後・以降の違い
「以後」も「以降」も、「ある時点より後のこと」を表す言葉です。
ただし、「以後」は「今後」という意味でも使われますが、「以降」を「今後」という意味で使うことはありません。
そして、「以後」は基準時より後の行動や物事を重視しますが、「以降」は基準時を重視します。
この点が、最も大きな違いといえるでしょう。
ちなみに、「10日以降」という場合は、「10日も含めてその日より後」という意味になります。
「以」には「~より」という意味があるため、基準時である10日も含まれることになるのです。
算数で習う「以上」「以下」と同じ感じですね。
なお、10日を含めたくない場合は、「10日の次の日から」「11日から」といった表現になります。
しかし、ある程度フランクに話せる間柄なら「10日はダメ、11日かそれより後なら大丈夫」といった感じで伝えると誤解がなくてよいでしょう。
まとめ
- 「以後」とは、ある時点より後のこと。「今後」の意味でも使われる。基準時より後の行動を重視するときに使う。
- 「以降」も、ある時点より後のことを意味する言葉。基準時をより重視するときに使う。
「今後」に置き換えられる場合は、「以後」一択です。
迷う場合は、基準時がある程度明確かどうかで判断しましょう。
基準時がはっきりしない場合は「以後」、基準時が明らかな場合は「以降」です。
「以降」を使う場合は、「基準時も含む」ということを忘れないようにしてくださいね。