「沈める」と「鎮める」と「静める」。
どれも読み方は同じ「しずめる」ですが、特に「鎮める」と「静める」は使う場面が似ているので、あらためて使い分けを問われるとうまく答えられない人も多いと思います。
そこでこの記事では、3つの「しずめる」の意味と使い分けについて調べました。
沈めるの意味・使い方
「沈める」は、「水の中に没するようにすること・姿勢を低くすること」という意味です。
つまり、物を水から浮かび上がらないようにしたり、体全体を低い位置に下げたりすることを「沈める」というのですね。
その他、「格闘技などで相手をノックアウトする」という意味でも使われます。
- ヘチマを水の中に沈めるために、石のおもりをつけた。
- 生け垣の後ろに身を沈めて、中の様子をうかがった。
- あんな奴、パンチ一発でリンクに沈めてやる!
鎮めるの意味・使い方
「鎮める」は「物事の勢いを抑える・乱れを抑える」という意味です。
良くない状態にあるものを、何らかの力を用いて整える時に使います。
また、神や魂など、霊的あるいは宗教的な存在を落ち着かせる際にも、「鎮める」を使います。
- 火の勢いを鎮めるのに、三日三晩かかった。
- 市民のデモを鎮めるために銃を用いるなんて、卑劣だ。
- 恐ろしい呪いを鎮めるために、力のある陰陽師を探している。
静めるの意味・使い方
「静める」は「音や声を出さないようにする・落ち着かせる」という意味です。
2つ目の意味が、「鎮める」の2つ目の意味(乱れを抑える)とよく似ています。
- 彼はざわめきを静めるために、鋭く笛を吹いた。
- 気持ちを静めるために、深く深呼吸をした。
沈める・鎮める・静めるの違い
「沈める」は、「物を水の中に入れて浮かび上がらないようにすること・低い姿勢をとること」です。
「鎮める」と「静める」はよく似た場面で使われますが、宗教的・霊的な場面で使われるのは「鎮める」だけです。
その他、「鎮める」は「良くない状態にあるものを整えること」の意味で使われ、「静める」は「音や声を抑えること・落ち着かせること」の意味で使われます。
では、「怒りをしずめる」は、「鎮める」・「静める」どちらが当てはまるのでしょうか。
一見どちらでも良さそうですが、「怒る」は通常「良くない状態」と言えるので、「鎮める」を使うほうが妥当といえます。
まとめ
- 沈めるは、物を水の中から浮かび上がらないようにすること・低い姿勢をとること。
- 鎮めるは、良くない状態にあるものを整えること・乱れを抑えること。
- 静めるは、音や声を抑えること・落ち着かせること。
①の使い分けは迷わないと思いますが、迷うのは②と③です。
宗教的・霊的な場面であれば「鎮める」、音や声を抑える場合は「静める」。
それ以外の場合は、良くない状況にあるものを落ち着かせるのか、その他のものを落ち着かせるのかを判断して使い分けましょう。