「思う」と「想う」。
どちらも読み方は「おもう」で、意味も大きく違わない印象があります。
しかしこの二つ、漢字の成り立ちを知ると、違いから使い分けまでスッキリ理解できるのです。
この記事では、わかると使い分けが簡単な「思う」と「想う」の違いをまとめました。
思うの意味・使い方
「思う」は、「頭の中で考えたこと・感じたこと」です。
「思考」という単語を思い浮かべると、わかりやすいですね。
「思」の「田」は、田んぼの「田」ではなく、幼児の頭蓋骨のつなぎ目を表す「囟(シン)」に由来するそうです。
つまり「田」=「頭」なので、「思」は「頭+心」ということになります。
そのように考えると、意味もすんなり理解できますね。
- 思っていることが、すぐ顔に出てしまう。
- あれこれ思いを巡らせているうちに、眠ってしまった。
想うの意味・使い方
「想う」は、「相手をおもうこと・心の中にイメージすること」です。
イメージは悪いですが、「妄想」という言葉がぴったりかもしれません。
そして、「想」の「相」は「相手」の「相」なので、「想う」は相手のことをおもうという意味で使われます。
さらに細かくみると、「相」は「木(事物)」+「目」で成り立っています。
そのため、「相」には「事物の姿を見る」という意味があります。
そして、「想」は「相」に「心」をプラスするので、「事物の姿を心で見る・イメージする」という意味になります。
- 彼女のことを想うと、仕事がまったく進まなくなる。
- 幼いころ、祖母の家で遊んだことをなつかしく想う。
思う・想うの違いは?
大雑把にいうと、「思う」は頭で感じることで、「想う」は心でイメージすることです。
そして、「大切に“おもう”」という場合、心の中でイメージする相手がいるわけですから、「想う」を使うのが正しいといえます。
なお、頭と心の区別はあいまいですが、思考をともなうものは「思う」で、何らかの感情(特に感傷的な感情)をともなうものは「想う」で良いでしょう。
また、「思う」の概念は非常に広いので、「想う」に当てはまらないものはすべて「思う」に含めても問題ありません。
ちなみに、「思う」は常用漢字で読み方も小学校低学年で習いますが、「想う」という読み方は常用漢字表に載っていません。
教科書や新聞、公文書などでは、「想う」の方がふさわしい場合であっても「思う」を使うので、あまりこだわる必要はないかもしれません。
まとめ
- 思うは、頭で考えたこと・感じたこと。
- 想うは、相手をおもうこと。心にイメージすること。
「思」も「想」も、漢字の成り立ちを知れば使い方に悩むことは少なくなります。
それでも迷う場合は、常用漢字の「思う」を使えば大丈夫ですよ。