「〇〇をおかす」という言葉は「してはいけないことをしている」という意味の言葉ですが、「おかす」に当てはまる漢字は状況によって変わってきます。
一方で、どの「おかす」を使うべきか分からず、困った経験があるという人も多いと思います。
そこでこの記事では、結構ややこしい「侵す・犯す・冒す」の意味と違い・使い分けについてまとめました。
侵すの意味・使い方
「侵す」は、
- 他人や他の国の領域に無理やり立ち入ること
- 権利や権益を損なうこと
- 尊厳を踏みにじること
です。
「侵」という文字が、侵入・侵略といった言葉に使われることからも分かりますね。
そして、「侵す」には必ず相手が存在します。
独り相撲は、「侵す」ではないということですね。
- 他国の領土はもちろん、領空・領海も侵すことは、許されない。
- 女性の権利を侵す就業規則は、無効にすべきだ。
- 聖域が侵された。
犯すの意味・使い方
「犯す」は、「法律・規則・道徳など守るべきルールを破ること」です。
また、無理やり姦淫する場合も「犯す」が使われます。
いずれにせよ、人としてやってはいけない行為をした場合に使うのが「犯す」です。
ただし「侵す」とは異なり、相手がいるとは限りません。
- 罪を犯しても、病気が原因の場合は刑が軽くなることがある。
- 女性を犯して逮捕された。
冒すの意味・使い方
「冒す」は、
- 危険や困難があるにもかかわらず行動すること
- 病が心身をむしばむこと
- 薬品などが物質を損なうこと
です。
一つ目の意味は、「冒険」という言葉に置き換えることができます。
なお、「冒す」もまた、相手がいるとは限りません。
- 危険を冒して、鬼から宝を取り返した。
- 全身をがんに侵されているが、不思議と元気だ。
- 鍋が酸に冒され、さびてしまった。
侵す・犯す・冒すの違いは?
「侵す」は、必ず相手のいる行為で、他者の領域・領土・権利・尊厳などを害する行為をいいます。
「犯す」は、必ずしも相手は必要ありませんが、守るべきルールを破ったときに使います。
「冒す」は、冒険に該当する行為や病気などにかかること、薬品などが物を損なう際に使います。
こちらもまた、相手は必須の存在ではありません。
ちなみに、ミスや過ちを「おかす」という場合、相手は必ずしも必要ではないので、「侵す」は使われないことが分かります。
また、使われる場面が比較的特殊で限定されている「冒す」も除外できます。
そして、ミスや過ちは守るべきルールを破ったときに起こりやすいものなので「犯す」が正しいことが分かります。
このように、一見するとどれを使うべきか迷う言葉であっても、消去法を使えば正しい答えにたどり着くことができます。
まとめ
- 侵すは、相手の領域・領土・権利・尊厳などを害すること。
- 犯すは、守るべきルールを破ること。
- 冒すは、冒険すること・病気にかかること・薬品などが物を損なうこと。
「冒す」は、使う場面が限定的なので、そのまま覚えてしまいましょう。
迷いやすいのは「侵す」と「犯す」ですが、相手がいない場合は「犯す」で大丈夫です。
一方で相手がいる場合は、何を害しているかを冷静に考え、正しい方を選ぶようにしましょう。