「十分」と「充分」、字が違うだけで意味はほとんど同じ、と思っていませんか。
実は「十」と「充」のどちらを使うのかで、微妙に意味が違ってくることがあるのです。
そこでこの記事では、何を満たすのかによって変わってくる十分と充分の違い・意味と使い分け方について調べてみました。
十分の意味・使い方
十分は「物理的に物事が満たされていること」です。
これだけだとよくわかりませんが、一つ・二つ・三つ……というように、数値化して図ることができ、客観的に満たされていることがわかる場合には「十分」を使うことができます。
- 今月分の売上げは、目標を十分上回っている。
- 参加者の人数分の資料は、十分に用意した。
充分の意味・使い方
充分は「精神的に満たされていること」です。
こちらは、数値化して図ることはできないものの、主観的に満たされている場合に使うことができます。
- そのお気持ちだけで充分です。
- 裕福ではありませんが、充分幸せです。
十分と充分の違いは?
十分と充分は、満たされている内容が「客観的に評価できる」かどうかで使い分けることができます。
数字であらわすことができるもの・だれが評価しても同じ答えになるものについては「十分」を使うのが適当です。
一方で、数値化できないもの・人により判断が異なるものについては「充分」のほうがふさわしいです。
では、「注意」と「足りる」は、「十分」と「充分」どちらを使うべきなのでしょうか。
「注意」は、客観的にも主観的にも評価できる言葉です。
たとえば、本人が「充分」注意して自動車の運転をしていても、事故を起こしてしまったらその注意は「十分」ではなかったと評価することができます。
同様のことが「足りる」にもいうことができます。
「これだけ食べ物があればじゅうぶん足りる」という場合、「十分」であれば「食べ物を必要とする人全員の分が間違いなくある」というような意味になります。
一方、「充分」の場合「たくさん食べることができるのでおなかが満たされる」という意味になります。
なお、文化庁では「充分は当て字である」「十は画数が少なく、教育漢字である」ということから、「十分」を使うべきとしています。
しかし、「十分」では「10分」と間違えてしまうケースがあります(例:時間は十分あります。という場合など)。
また、憲法には「充分」という文言があります。
そのため、「充分」は当て字ではあるものの、間違いとまではいえないと考えられます。
まとめ
- 十分は、物理的・客観的に満たされていること。
- 充分は、精神的・習慣的に満たされていること。十分の当て字。
充分は当て字ということなので、とりあえず「十分」を使えば大丈夫です。
ただし、「十分」と「10分」が混同されやすい場面では、他の言葉に言い換えたり、あえて「充分」を使ったりしても大丈夫です。